
三重県尾鷲農林水産事務所 水産室 室長 勝田孝司
三重県は豊かな水産資源と1,088kmもの海岸線を持つ全国でも有数の水産県です。
しかし、本県の漁業就業者は2023年漁業センサスによると4,220人で、前回2018年漁業センサスの6,108人と比較すると、5年間で約3割減少し、その約45%が65歳以上であるなど、就業者数の減少と高齢化が進んでいます。
このような中、本県では、令和2年10月に策定した「三重県水産業及び漁村の振興に関する基本計画」において、多様な担い手の確保及び育成を重要な課題と位置付け、本県漁業に関する情報発信や漁師塾の開設支援、長期研修支援制度の活用などの取組みを実施しています。
「早田漁師塾」は漁業関係者のご尽力により、漁業者を育成する場として平成24年度から始まり、各種の漁業実習はもとより、漁村での生活に係ることなど様々なプログラムが準備され、一般的な漁業体験よりさらに踏み込んだ内容となっています。
漁師になりたいと思っている多くの方々が、早田漁師塾の門を叩き、将来漁業者になるきっかけとなることを心から願っております。
尾鷲市 水産農林課 課長 芝山有朋
尾鷲市では、漁業従事者の高齢化と新たな担い手不足が深刻で、水揚量も減少傾向にあり、新規漁業就業者の確保と育成が課題となっています。そんな中、若者の水産業への従業・就労の促進や、漁協等が取り組む人材育成、就業・就労支援を行う新たな仕組みづくり・拠点モデルの構築を目的として、平成24年度から「早田漁師塾」が開講されることになりました。
「早田漁師塾」は、釣り・操船・ロープワークなどの実技と、資源管理・水協法などの座学を4週間受講してもらい、卒業後は三重県各地での漁業就業相談等の支援が受けられるようなプログラムを用意し、地元漁協と地区・住民が一体となって運営されています。参加者には4週間住み込みで生活してもらい、実際に漁村の雰囲気を感じ、地元住民と接することで、普段の生活では得られないような「生きた漁村の生活」を体験してもらえます。
「漁師になりたいけど、どうやればなれるのかわからない。」「短期の漁業体験だけでは物足りない!」といった、漁師を目指す多くの若者に参加していただき、将来、早田地区はもとより、尾鷲市、三重県の漁業を支えていくような漁師になってもらえるよう、本市としても支援してまいります。
三重水産協議会 水産振興室 室長 堤康夫
三重県は全国有数の漁獲高を誇り、漁業が沿岸地域産業の発展に大きく貢献してまいりました。
しかし、近年、資源の減少や漁場環境の悪化、燃油価格高騰など様々な要因により業界の後退は目に余る状況であります。結果、漁業後継者不足が深刻化し未来の漁業を支える担い手づくりは喫緊の課題となっており、とりわけ、漁業が基幹産業である三重県南部地方では、地域を支える若者の流出により急速な過疎高齢化が進み地域の社会機能不全が危惧されております。
現在、本県では担い手対策として就業フェアや体験教室などさまざまな取組みが行われております。一方で、それらを経て研修に入ったものの、思い描いていた姿と現実の漁業、漁村とのギャップにより漁村を去る方が少なくありません。加えて、漁師として生きていくために必要な知識を学べる場がなくスムーズに本格的な就業まで移行できる受入体制も整っておりませんでした。
この度開校される早田漁師塾は、漁村に密着した漁師育成機関であり、これら諸課題に一矢を報いる取組みとして尾鷲漁協、早田地区の皆さんと協議してまいりました。
この取組みを突破口として、ここで培われたノウハウや若手を受け入れる機運が県内に波及し、早田漁師塾の卒業生が将来の漁業、将来の漁村を支える力強い人材として三重県各地の浜で活躍する日を心待ちにしております。